一人、知らない街へ降り立つたびにあの日の寂しさが泣いている。

今度有給を使って旅に出る。気遣いが求められる仕事柄、プライベートは誰にも気を使わずにいたいタイプだが、最近は誰か誘えたら、と思うことも多い。元々ひとり旅が好きな人間だったのだが、今は少し苦手。

理由はわかっている。

私にはかつて好きな人がいたのだ。遠距離になるのをわかっていて付き合ったのだが、うまくいかなかった。相手は上京し、2度会いに行った。2度目にあった頃にはもう向こうが冷めきっていて、私に背を向けて仕事をしてるかひたすら寝ているかだった。

「〇〇に行くんだけど、一緒に行く?」「……いや、いい」

私は知らない街を一人で歩いた。時折街行くカップルを追い越すたび寂しさが心を締め上げた。相手の家に転がり込んだのは私の我儘ではあったが、付き合っていながら、同じ部屋にいながら、相手の世界にはもう私など存在しないのだという事実がたまらなく寂しかった。

知らない街を歩く時、今でもふとあの寂しさがよぎるのだ。

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