プロローグ
吉田篤弘の小説、「フィンガーボウルの話の続き」の中に「聞いている人などいないかもしれない」と語りながらラジオ放送する女性が出てきたと記憶しているが、今の私はその放送する女性の気分で、それこそ誰も見ないかもしれない言葉を羅列してみる。
大学時代は文芸部で編集長などしておりました。「字は体を表す」とは言うけれど、それ以上に文章はその人のリズム感、思想、好み、性癖等が見え隠れする。「あーあの人の作品ね」みたいな。
でもたまに私には書けない、私には到底出てこない言葉選びをする人がいて、同い年ながら毎度憧憬と嫉妬がごちゃごちゃになりながら、半ばこの人には勝てないなと思っていた。毎回「君の書く小説はサイコーだよ」などと本心なのにそんな薄っぺらい言葉しか出てこなくて、「うちも君の作品好きやで」という返答を「またまた〜」と流した。未だに信じられてない。
自分に書けない文章を書く人が好きです。
棘ト光。と申します。
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